なぜ「手作りのプレゼント」は、高級ブランドより心に残るのか

· notf

小学生のとき、母の日にクレヨンで描いた似顔絵を渡したことがある。

お世辞にも上手とは言えない。目の大きさは左右で違うし、髪の毛は黒いクレヨンでぐちゃぐちゃに塗りつぶしただけ。「おかあさんいつもありがとう」の「あ」は鏡文字になっていた。

でも母は泣いた。

あれから何十年も経って、実家に帰ると、あの似顔絵はまだ冷蔵庫に貼ってある。その横には、去年贈った少し高いストールがハンガーにかかっている。ストールも気に入ってくれたと思う。でも冷蔵庫に貼られているのは、似顔絵のほうだ。


「上手さ」は関係ない

心理学の研究で、面白い実験がある。

被験者にふたつのプレゼントを見せる。ひとつは市販の高品質なマグカップ。もうひとつは、手作りの少し不格好なマグカップ。「どちらをもらったら嬉しいか」と聞くと、多くの人が手作りのほうを選ぶ。

しかも理由を聞くと、「上手だから」とは誰も言わない。

自分のために時間を使ってくれたことが嬉しい」と答える。

つまり、プレゼントの価値は「完成度」ではなく「誰かが自分のことを考えながら作った」という事実にある。下手でもいい。不格好でもいい。「あなたのために作った」。それだけで十分なのだ。


大人になると「作る」をやめてしまう問題

子どもの頃は、誰もがクリエイターだった。

折り紙でカエルを折って友達に見せた。自由帳にオリジナルの迷路を描いて「解いてみて」と渡した。段ボールで秘密基地を作った。砂場でケーキを作った。

それがいつの間にか、「作る」ことをやめてしまう。

大人になると、贈り物はAmazonで検索して、レビューを読んで、カートに入れて、届いたものを渡す。便利だし、失敗しない。でもどこか、味気ない。

やめた理由は明確だ。「自分には才能がない」と思い込んでいるから。

絵はプロのイラストレーターに敵わない。料理はシェフに敵わない。DIYはプロの職人に敵わない。比較対象がSNSで可視化される時代、「自分程度のものを渡すのは恥ずかしい」と感じてしまう。

でも思い出してほしい。あのクレヨンの似顔絵を。

上手さは、関係なかったはずだ。


「作る」が戻ってきている兆し

最近、少し風向きが変わってきた気がする。

友達の誕生日に、スマホで短い動画を編集して贈る人が増えた。旅行の写真をコラージュにして送る人もいる。LINEスタンプを自作する人もいる。

共通しているのは、「完璧じゃなくていい」という空気が生まれていること。

むしろ少し粗いくらいが「手作り感」があっていい。加工アプリで盛りまくった写真より、ちょっとブレたプリクラのほうが友達との思い出として残る。あの感覚に近い。

プリクラが写真を「撮られるもの」から「友達と一緒に作るもの」に変えたように、「作る」という行為自体がコミュニケーションになりつつある。


友達に「ゲーム」を贈った日

先日、友人の誕生日に変わったプレゼントを贈った。

ゲームだ。

といっても、Switchのソフトを買ったわけではない。友人を主人公にした、世界にひとつだけのゲームを作って贈った。

友人はラーメンが大好きなので、「制限時間内にラーメンの具材を集めて最強の一杯を完成させる」という内容にした。隠しキャラとして友人の飼い猫も登場させた。

「え、これ俺のために作ったの?」

友人は最初、信じられないという顔をしていた。そしてゲームを遊び始めて、隠しキャラの猫を見つけた瞬間に爆笑した。

「これすごいな、どうやって作ったの?」

正直に答えた。プログラミングはできない。デザインもできない。ゲーム開発の経験もゼロ。ただ「こういうゲームにしたい」と話しただけだ。


「作りたい」と「作れる」の間にあった壁

これまで、「ゲームを作る」というのは専門的なスキルが必要な行為だった。プログラミング、デザイン、サウンド。ひとつのゲームを完成させるには、いくつもの技術を身につける必要があった。

「友達のためにゲームを作りたい」と思っても、勉強に何ヶ月もかかるなら、結局Amazonで何か買ったほうが早い。

でも今は、その壁がなくなりつつある。

自分が使ったのは DreamCore というサービスで、「こういうゲームにしたい」とチャットで伝えるだけで、AIがブラウザゲームを作ってくれる。

「ラーメンの具材を集めるゲーム」「制限時間は60秒」「隠しキャラで猫を出して」。こんなふうに、日本語で話すだけ。完成したゲームはURLひとつで共有できるから、LINEで送るだけでいい。

プログラミング不要。ダウンロード不要。無料で始められる。


完璧じゃなくていい

もちろん、プロが何ヶ月もかけて作ったゲームと比べたら、クオリティは違う。

でも、あのクレヨンの似顔絵を思い出してほしい。

大事なのは完成度じゃない。「あなたのために作った」という事実だ。

友人が隠しキャラの猫を見つけて笑った瞬間。あれは、どんな高級ブランドのプレゼントでも生まれなかった瞬間だと思う。

次の誕生日、記念日、あるいは何でもない日に。

「ゲームを作って贈る」という選択肢を、ひとつ持っておくのも悪くない。


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